自分の代わりがいないステージを探して

代わりなんていくらでもいる。

パワハラ上司が言いそうな、よくあるフレーズ。他人の尊厳を否定したり、自分に努力をやめる言い訳を与えたり。他人にも自分にも向けることができる使い道が多いセリフだ。

生きていると、代わりどころか自分よりも良い仕事をする人がたくさんいることにも気づいてゆく。見て見ぬフリができないくらい、現実は巨大だ。オンラインもオフラインも、凄い人がたくさんいる。自分のやることのだいたいが代替可能なのである。

たとえばWebライターは、よく文字単価の話をする。3円、5円、10円。画面上に挙げられる数値に驚きを隠せない。嘘ではないかと思う。きっと、嘘ではない。みんな年収はどれくらいあるのだろうか。羨ましくて吐きそう。凄い。

学生時代に一緒に音楽をやっていたギタリストは、今はさまざまなバンドのサポートメンバーだ。難しそうな曲もたくさんコピーしてTwitterで公開している。初心者だった彼にコードの押さえ方やシールドの作り方を教えたのは自分なのに。現状の差に吐きそう。凄い。

そんな何かにつけて比べてしまいがちな日々のなかでは「代わりがいるならいっか」というマインドを持つことは大切だ。別に無理して全てに勝る必要はない。

代わりがいるからこそ、自分が何を選ぶのかが重要となってくる。全部を抱えるのは難しく、無謀すぎる。自分のこだわりを持つ部分と他人の凄さに身を任せる部分を使い分けて、軽やかに歩いてゆきたい。

なんて、キレイに気持ちをまとめることができたら良いのだがそうもいかない。ストレスは秒速5センチメートルで吐き気を運び、口内には酸味があふれる。インターネットは情報だけではなく、胃酸も運んでくるらしい。

彼ら彼女らの代わりも、きっといる。実際、いると思う。いてほしい。

自分の武器はまだわからない。わかっているのは、凄いと感じる人たちよりも圧倒的に試行回数が少ないこと。人生の残り時間が見えない以上、今からでも間に合うかすら判断できない。ただ、努力をしていたほうが他人の凄さに素直に感動できるのは確かだ。

今は羨望の対象である彼ら彼女らでも代わることのできない何かが自分にもあるはず。何度でも言い聞かせ、常に独自の持ち味を探すしかない。自分の代役を立てることなんて不可能なステージを見つけられる日まで、探求は続く。
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